そもそも注文請書とは?印紙との関係性
注文請書と印紙の関係性を把握するには、まず「注文請書とはなにか」をあらためて確認しておく必要があります。 そもそも注文請書とは、発注者が発行した注文書に対して「たしかに承りました」と意思表示をするための書類です。 発注の申し込みをしてきた相手に対して承諾の返答をするため、そのやり取りを通じて、契約が成立したとみなされます。 「注文書と注文請書のセット」と「契約書」は、同じく契約成立について効力を持つ書類といえるでしょう。 さて、紙面で請負契約を結ぶ場合は、課税文書(第2号文書)に該当するため、印紙を貼付しなければなりません。 たとえば、発注元の指示のもと建設したり製作したりする場合は請負契約となり、注文請書には印紙が必要です。 しかし単発かつすでに製品として出来上がっているものを購入するときは、売買契約とみなされるため、印紙は不要になります。 ※一定期間継続する売買契約の場合は、第7号文書に該当し、印紙が必要 とはいえ、注文請書は発行が義務付けられているものではなく、受注者が任意で作成するもの。 契約金額が大きかったり初回取引だったりする場合を除けば、電話やメールで「承りました」と返事をして済ませ、注文請書を発行しないことがほとんどです。 そのため金額の大きな商品・サービスを扱う業界でなければ、扱う機会は少ない傾向にある書類といえるでしょう。
注文請書に印紙が不要なケースとは?
ここまでご紹介してきたとおり、基本的には、紙面で注文請書を発行したら印紙を貼付しなければなりません。 しかし実は、注文請書でも、印紙が不要なケースがあります。 <注文請書に印紙が不要となるケース> 注文請書をメールやFAXで送信するとき 金額が1万円以下の取引のとき 売買契約のとき ほかに契約書も作成するとき 電子契約するとき それぞれの内容を、具体的に確認していきましょう。
2-1. メールやFAXで送信する場合
メールやFAXで注文請書を送信する場合は「現物による交付をおこなわない」ため、印紙が不要とされています。 現物が交付されなければ、課税文書を作成したことにはならないというのが、国税庁の見解です。 例として、2008年に国税庁から発表された回答を引用します。 注文請書の調製行為を行ったとしても、注文請書の現物の交付がなされない以上、たとえ注文請書を電磁的記録に変換した媒体を電子メールで送信したとしても、ファクシミリ通信により送信したものと同様に、課税文書を作成したことにはならないから、印紙税の課税原因は発生しないものと考える。 ただし、電子メールで送信した後に本注文請書の現物を別途持参するなどの方法により相手方に交付した場合には、課税文書の作成に該当し、現物の注文請書に印紙税が課されるものと考える。 引用:別紙1-3 事前照会者の求める見解となることの理由(「請負契約に係る注文請書を電磁的記録に変換して電子メールで送信した場合の印紙税の課税関係について」より) ここで注意したいのは、課税文書の「作成」と「調製」は異なる点です。 「調製」は、注文に従い作ることを指すことばです。 一方「作成」は以下のとおり、文書を調整したうえで、現物を用いて契約を行使・交付することをいいます。 印紙税法に規定する課税文書の「作成」とは、印紙税法基本通達第44条により「単なる課税文書の調製行為をいうのでなく、課税文書となるべき用紙等に課税事項を記載し、これを当該文書の目的に従って行使することをいう」ものとされ、課税文書の「作成の時」とは、相手方に交付する目的で作成される課税文書については、当該交付の時であるとされている。 引用:別紙1-3 事前照会者の求める見解となることの理由(「請負契約に係る注文請書を電磁的記録に変換して電子メールで送信した場合の印紙税の課税関係について」より) そのため、現物交付がされないメール・FAX送信時の注文請書は、課税文書ではないと解釈されるのです。
2-2. 金額が1万円未満の場合
「注文請書を現物交付するため、課税文書に該当する」という場合でも、取引金額が1万円以下なら印紙は不要です。 課税文書にかかる印紙税は以下のとおりに設定されており、1万円未満の取引は非課税になります。 引用:国税庁「No.7102 請負に関する契約書」
記載された契約金額 |
税額 |
1万円未満のもの |
非課税 |
1万円以上100万円以下のもの |
200円 |
100万円を超え200万円以下のもの |
400円 |
200万円を超え300万円以下のもの |
1,000円 |
300万円を超え500万円以下のもの |
2,000円 |
500万円を超え1,000万円以下のもの |
1万円 |
1,000万円を超え5,000万円以下のもの |
2万円 |
5,000万円を超え1億円以下のもの |
6万円 |
1億円を超え5億円以下のもの |
10万円 |
5億円を超え10億円以下のもの |
20万円 |
10億円を超え50億円以下のもの |
40万円 |
50億円を超えるもの |
60万円 |
契約金額の記載のないもの |
200円 |
また印紙税が必要か不要かを判断するときには、消費税抜きの金額を使用します。 つまり、税抜き9,999円までの取引なら、印紙の貼付は不要です。 ただし、注文請書に税抜き価格が明記されていない場合は、税込み価格での課税となります。 本来不要な税金も追加で納めることにならないよう、料金の記載方法に注意しましょう。 広告の請負契約書に「請負金額1,100万円うち消費税額等100万円」と記載したとします。この場合、消費税額等100万円は記載金額に含めませんので、記載金額1,000万円の第2号文書となり、印紙税額は10,000円となります。 (中略) しかし、消費税額等について「うち消費税額等100万円」ではなく、「消費税額等10パーセントを含む。」や「請負金額1,100万円(税込)」と記載した場合には、消費税額等が必ずしも明らかであるとは言えませんので、記載金額は1,100万円として取り扱われ、第2号文書の場合、印紙税額は20,000円となります。 引用:国税庁「No.7124 消費税等の額が区分記載された契約書等の記載金額」
2-3. 1度だけ売買契約をする場合
課税文書に該当するのは、請負契約や継続的な売買契約などです。 そのため1回のみの売買契約の場合は、印紙の貼付は不要になります。 請負契約になりますと、記載金額がある場合は階級定額税率が適用される第2号文書(請負に関する契約書)になり、記載金額のない請負契約で継続するものは、第7号文書(継続的取引の基本となる契約書)になります(通則3のイ)。 また、物品の売買契約になりますと、継続する売買契約で第7号文書になるものを除き、不課税文書になります。 請負契約か売買契約かの判断基準は、契約当事者の意思が、仕事の完成に重きをおいているか、物の所有権移転に重きをおいているかによって判断します。 引用:国税庁「請負と売買の判断基準(1)」 つまり、商品を提供する契約において交付する注文請書に印紙税がかかるかどうかは、売買の回数で判断することになります。 しかし、なかにはサービス提供なのか物品提供なのか、判断しにくい場合もあるでしょう。 迷ったときは、請負契約と売買契約の線引きについて国税庁が例をまとめているため、一度確認しておくのをおすすめします。 引用:国税庁「請負と売買の判断基準(1)」
区分 |
内容 |
請負・売買の事例 |
請負契約に該当すると認められるもの |
注文者の指示に基づき一定の仕様又は企画等に従い、製作者の労務によって工作物を建設することを内容とするもの |
・家屋の建設 ・道路の建設 ・橋りょうの架設 |
注文者が材料の全部又は主要部分を提供(有償、無償を問わない。)し、製作者がこれによって一定物品を製作することを内容としたもの |
・生地提供の洋服の仕立て ・材料支給による物品の製作 |
製作者の材料を用いて注文者の設計又は指示した企画等に従い一定物品を製作することを内容とするもの |
・船舶、車両、機械、家具等の製作 ・洋服等の仕立て |
一定物品を一定の場所に取り付けることによって所有権を移転することを内容と するもの |
・大型機械の取り付け |
修理又は加工を内容とするもの |
・建築・機械の修繕、塗装 |
売買契約に該当すると認められるもの |
一定物品を一定の場所に取り付けることによって所有権を移転することを内容とするものであるが、取付行為が簡単であって、特別の技術を要しないもの |
・テレビを購入した時のアンテナの取付けや配線 |
製作者が工作物をあらかじめ一定の規格で統一し、これにそれぞれの価格を付して注文を受け、当該規格に従い、工作物を製作し、供給することを内容とするもの |
・建売住宅の供給(不動産の譲渡契約書) |
あらかじめ一定の規格で統一された物品を、注文に応じ製作者の材料を用いて製作し、供給することを内容とするもの |
・カタログ又は見本による機械、家具等の製作 |
2-4. ほかに契約書も作成する場合
注文請書のほかに契約書を作成する場合は、契約書のほうへ印紙税が課せられます。 これは、契約を行使する役割を負うのが契約書になるためです。 つまり注文請書には印紙が不要で、契約書には印紙が必要となりますので、間違えないよう注意しましょう。
2-5. 電子契約を交わす場合
電子契約サービスを使って契約する場合も、印紙の貼付は不要です。 印紙税法では、印紙税を納める義務があるのは「文書」つまり紙面の書類に限られるとされています。 そのため、紙面を用いない電子契約は非課税となるのです。 電子契約と印紙税については「電子契約に関わる法律にはなにがある?導入する際の注意点とは?」で詳しくご紹介していますので、気になる方はあわせて確認しておきましょう。
注文請書と印紙に関するよくある疑問
注文請書と印紙については、ほかにもよくわからない点がある方も多いはずです。 そこで、注文請書と印紙について、よくある疑問を3つ解説します。
3-1. 誰がどこに印紙を貼るのか?
印紙税を納める義務を負うのは、書類の作成者です。 そのため、基本的には受注する側が印紙税を納入します。 引用:国税庁「課税文書の作成時期及び作成者」
区分 |
作成者 |
法人等の役員又は法人等若しくは人の従業員が、その法人等若しくは人の業務又は財産に関して作成する課税文書 |
当該法人等又は人 |
その他の課税文書 |
当該課税文書に記載された作成名義人 |
ただし、注文請書ではなく契約書を交付する場合は、2部作成してそれぞれ印紙税を負担することも多いもの。 契約書を発行したときと同様に費用を折半したり、話し合いのもと負担者を決めたりするのもよいでしょう。 トラブル回避を重視する場合は、事前に話し合いの場を設けておくのがおすすめです。 また印紙を貼る場所は、表紙や表題の左右にあるスペースなどが代表的です。 文字に重ならず、消印もきちんと押せる場所へ貼り付けましょう。
3-2. 印紙を貼り忘れるとどうなる?
うっかり印紙を貼り忘れると、過怠税がかかります。 過怠税を納める場合は、本来の印紙税にくわえて、その2倍相当の税金を支払わなければなりません。 たとえば1,001万円~5,000万円の契約をした際は、もともとの印紙税2万円に4万円が上乗せされ、合計6万円を納入する必要があるのです。 また印紙に消印がされていなかったときは、印紙の額面金額に相当する金額を過怠税として納めなければなりません。 印紙の要・不要や消印がされているかについては、慎重にチェックしましょう。 印紙による納付の方法によって印紙税を納付することになる課税文書の作成者が、その納付すべき印紙税を課税文書の作成の時までに納付しなかった場合には、その納付しなかった印紙税の額とその2倍に相当する金額との合計額(すなわち印紙税額の3倍)に相当する過怠税を徴収されることになり、また、貼り付けた印紙を所定の方法によって消さなかった場合には、消されていない印紙の額面金額に相当する金額の過怠税を徴収されることになっています。 引用:国税庁「印紙を貼り付けなかった場合の過怠税」
3-3. 注文請書に割印は必要?
注文請書の場合、割印は不要です。 割印とは、2部以上用意した契約書に、紙面をまたがって押す判子のことをいいます。 印紙と注文請書にまたがって押す「消印」は必要ですが、2部以上の書類にまたがって押す「割印」は不要ですので、混同しないよう注意しましょう。
印紙代を節約するなら電子契約を活用しよう
印紙税は、紙で書類を交付したときにかかる税金です。 1件1件は大きな金額でなくても、1年の総額でいえばまとまった費用になるでしょう。 しかしすでにご紹介したとおり、電子契約なら印紙が不要になるため、コストカットに役立ちます。 さらに書類を現物として保管しないことで、保管スペースを確保したり書類を整理したりする手間も不要になります。 電子契約を導入すれば、コストカット・省スペース化・業務の効率化が狙えるでしょう。 「よりスマートな契約方法を検討してみたい」 「カットできるコストは積極的にカットしていきたい」 そのようにお思いの方は、ぜひ電子契約サービスをご確認ください。 なかでも「Legal Sign」は、月額料金4,980円と1ファイルごと200円の費用のみで利用できる、導入しやすい電子契約サービスです。 注文請書はもちろん、各種契約書・同意書・申込書にも対応しており、さまざまな書類を電子化できます。 気になったら、まずは「Legal Sign」から資料請求をしてみましょう。