旧来は、ブランディングとは対外的におこなわれるものでした。
すなわち、顧客や一般消費者に向けて自社のポジティブなイメージを発信することで、価値を高めていました。
インナーブランディングとは、上記の従来型のブランディングとは異なり、自社の従業員に対してブランディングをおこなう手法です。
この記事では、インナーブランディングの効果や実践方法を具体的にわかりやすくご紹介します。
インナーブランディングとは?
インナーブランディングとは、社内に向けたブランディングのことです。
企業ブランドに対する社内の理解度を高め、浸透させることにより、ブランディングを実現します。
インナーブランディングを理解するためによい例となる企業は、スターバックスや東京ディズニーランドです。
これらの企業の社員やパート・アルバイトスタッフは、ブランドイメージを理解したうえで自社の理念やビジョンに沿った行動をとっています。
その結果、消費者に対して一貫したブランドイメージを与えることに成功しています。
つまり、インナーブランディングは対外的なブランディング効果においても有効になりうる施策です。
インナーブランディングの4つの効果
社内にブランディング施策を実施することによって、どのような効果がもたらされるのかイメージしづらいという方もいらっしゃることと思います。
この章では、インナーブランディングの実践がもたらす効果を4点ご紹介します。
2-1.社員の方向性が統一される
インナーブランディング実践により社員の企業理念やビジョンへの理解が深まると、社員の方向性が統一されます。
日ごろの営業において、行動の基準となる考え方が確立されるためです。
また、企業理念を理解したスタッフは、会社へのロイヤルティ(忠誠心)が高くなり、エンゲージメント(会社と従業員との相互の信頼による結びつき)が向上します。
2-2.仕事への満足度の向上
従業員が自社のブランドの価値を理解したうえで仕事に従事すると、仕事へのモチベーションが高まり、満足度が向上します。
ブランドの価値を理解することにより、普段の仕事に価値を見出せるようになるためです。
また、やりがいをもっておこなった仕事の結果が利益に結びついたり、顧客の役に立ったりすることで、社員はさらなる充実感を得られるでしょう。
2-3.仕事の質アップ
自社のビジョン・理念の理解が深い社員は、仕事に従事する際に高い集中力を発揮するようにもなります。
自発的・積極的な姿勢も多くみられるようになるでしょう。
こうしたスタンスは、仕事の質の向上につながります。
複数名のスタッフが質の高い仕事に取り組むと、顧客満足度・生産性の向上にもつながります。
さらには、売上の増加も期待できるでしょう。
2-4.従業員の離職率の低下
会社に対するロイヤルティが向上し、社員の満足度が高まると、当然ながら離職率の低減にもつながります。
社員の定着率の低下は、以下の効果にもつながります。
・長期的に雇用関係を継続することで、より深く理念やビジョンが理解される
・社内のノウハウが蓄積され、スタッフの技術力やビジネス力が向上する
・採用コストを抑えられる
人手不足や採用難が叫ばれる近年において、社員の定着性の向上は非常に大きなメリットです。
インナーブランディングに取り組む際に知っておくべきリスク
インナーブランディングは、経営の体質をガラっと変更してしまうほどのポジティブな影響があります。
しかし、取り組み方によってはリスクとなりうる点もあります。
この章では、3つのリスクをご紹介します。
3-1.コストがかかる
最初に知っておかなくてはならないのは、具体的にどのような取り組み方をするにせよ、インナーブランディングには費用・手間がかかります。
コストをまったくかけずにインナーブランディングに成功する事例はほとんどありません。
例えば、社内チャットを使って社員向けにインナーブランディングに関する情報を発信する際には、以下の部分でコストがかかります。
・情報発信するコンテンツを制作するための時間・手間・人件費
・情報発信ツールの導入費用
かかるコストはケースバイケースですが、コストと手間をかけて取り組む姿勢が不可欠です。
3-2.効果の測定がしづらい
インナーブランディングの効果は数値などで測りにくいため、費用対効果の測定が難しい面があります。
長期的に取り組むことにより生産性の向上や売上のアップにつながることもありますが、インナーブランディングが結果にどの程度貢献したのかは、計測不可能です。
インナーブランディングの効果を信じて、目先の結果に左右されずに取り組む姿勢が求められます。
3-3.中途半端な取り組みは逆効果になる
インナーブランディングは、ビジョンや理念が適切でない場合には、逆効果になる恐れがあります。
・ほかの企業の受け売りで、自社の実態とはかけ離れている
・およそ実現不可能で高尚すぎる
・内容が抽象的で、理解しづらい
上記のような理念・ビジョンを掲げても、社員の気持ちにはまったく響きません。
むしろ、手間やコストがかかる分、逆効果になる可能性が高いでしょう。
インナーブランディングの取り組み方
誤った対応を取らないためにも、インナーブランディングの取り組み方を把握しておく必要があります。
この章では、代表的な取り組み方を4つご紹介します。
4-1.働きやすい環境の提供・福利厚生
働きやすい環境を整えることは、インナーブランディングの土台作りといえます。
従業員の労働環境が劣悪だったり、パワハラ・セクハラなどがはびこっていたりすると、理念やビジョンの浸透は難しいためです。
社内の規則や設備の整備と並行して実態についても確認・改善を試みることが重要です。
例えば、ストレスケアに関して相談窓口を設置するだけでは不十分で、悩みを抱えている社員が相談できる環境を整えなくてはなりません。
4-2.ビジョンやバリューの共有
ビジョンやバリューの発信は、経営陣が率先しておこないます。
社員が自社に誇りをもてるような内容を、キャッチーな言葉で発信するようにしましょう。
現状の事業内容や状況から夢のあるビジョンの創造が難しい時には、3年後・5年後などの近い未来のビジョンを考えるのもよいでしょう。
4-3.情報発信をする
比較的身近なバリューや自社の理念に沿った行動などに関しては、積極的に情報共有する姿勢が効果的です。
例えば、社員の自社ビジョンに沿った行動をビジネスチャットで一斉通知したりするなどの方法もあります。
4-4.表彰をする
他の社員の模範となるような、自社のバリューを高めた社員に対する表彰も効果的です。
あくまでも、「バリューの体現」に価値があるため、表彰の根拠を「売上」などの実績に求めないことが重要です。
インセンティブを設定すると、よりインパクトのある表彰になります。
まとめ
インナーブランディングは、自社の社員に対するブランディングのことです。
効果測定が難しいという点はあるものの、うまくインナーブランディングを体現することにより、社員が自社の価値やブランドに誇りを持つようになります。
その結果、顧客満足度の向上や売上のアップなど、さまざまなメリットにもつながる可能性があります。
インナーブランディングは、費用や手間をかけて長期的に取り組むことが大切です。
ぜひ、この記事を参考にしてインナーブランディングに取り組んでください。