かつては社員が退職をする場合の根本的な原因は、社員のモチベーションやスキルが原因であると考えられていましたが、
近年では企業側の考え方・体制・施策が重要であるとの考え方が主流化しています。
そして、人事における社員定着の重要な考え方の一つが、リテンションです。
この記事では、リテンションの概要・必要とされる背景・具体的な取り組み方について解説します。
さまざまな方法を試しているもののなかなか社員引き留めの対策ができていない、という企業の担当者様はぜひ参考にしてください。
この記事の目次
人事におけるリテンションとは?
リテンションという単語のそもそもの意味は「維持・保持」です。リテンションは近年、ビジネス(特に人事・マーケティング)においてよく使用されるようになりました。
人事におけるリテンションとは、社員の離職や退職を引き留めるための施策全般を指します。
(マーケティングにおいてリテンションという場合は、既存顧客との関係性を維持する意味で用いられます)
従業員の引き留めは、以前から人事においては重要なテーマです。
近年では、人事における重要性が従来以上に高まっており、リテンションをないがしろにすると、会社の存続にまで影響するとの意見もあります。
企業側がさまざまな施策によりリテンションに取り組むことをリテンションマネジメントといいます。
リテンションが必要とされる背景とは?
「ヒト・モノ・カネ」が経営の3原則といわれ続けていることからもわかるとおり、人材の重要性はかつてから強く主張されています。にもかかわらず、近年リテンションの重要性が叫ばれているのはなぜでしょうか?
この章では、リテンションが必要とされている理由を解説します。
2-1.少子高齢化による人材不足
少子高齢化により、人材不足の問題はかつてよりも深刻化しています。また、経済のグローバル化が進み、海外の企業との厳しい競争が避けられない状況のなかで、従業員一人ひとりが高いパフォーマンスを発揮しなくてはなりません。
こうした「慢性的な人手不足」「高度なスキルをもつ人材の欠乏」などの事情から、自社の既存の社員を引き留められるか否かが非常に大きな問題となっています。
社員が退職してしまった場合、その補充として新たに人材を採用するのが難しく、できたとしても同じレベルの社員を雇用できるとは限りません。
2-2.人材採用のコスト増大
採用の難化と比例して、人材採用にかかる費用も高騰しています。例えば、新卒採用をおこなう際の費用相場は、採用媒体の広告費として50~200万円の費用がかかります。
さらに、採用のためのパンフレットやウェブページ製作費・説明会会場費・人件費など、間接的にかかる費用項目も少なくありません。
参照:新卒採用にかかる経費はいくら?相場は?コストの中身と削減ポイントまですべて解説
中途採用に関しても、費用の内訳は新卒よりも低価格である傾向はあるものの、採用費は高騰しています。
従って、社員の退職と補充のための採用を繰り返していると、コストがかなり余分にかかってしまうことになります。
社員の入れ替わりが激しい会社は、内部にノウハウやスキルが蓄積されにくいという点です。
最悪のケースでは、退職をした社員がライバル企業に入社する危険性もあります。
社員と企業がともに成長できる体制を整えることが大切です。
中途採用に関しても、費用の内訳は新卒よりも低価格である傾向はあるものの、採用費は高騰しています。
従って、社員の退職と補充のための採用を繰り返していると、コストがかなり余分にかかってしまうことになります。
2-3.社内ノウハウの流出
業務の質の面でも、デメリットがあります。社員の入れ替わりが激しい会社は、内部にノウハウやスキルが蓄積されにくいという点です。
最悪のケースでは、退職をした社員がライバル企業に入社する危険性もあります。
社員と企業がともに成長できる体制を整えることが大切です。
人事・採用における4つのリテンション施策とは?
社員の流出を防止するための取り組みは、大半の企業が多かれ少なかれ、これまで取り組んでこられたことでしょう。それでも、望ましい効果が得られていない場合や、やはり取り組み方が不十分であったり、正しくなかったりする可能性があります。
この章では、具体的なリテンションの取り組み施策を4点解説します。
3-1.待遇の改善・正当な評価
最初に押さえておきたいポイントは、評価制度です。 評価制度の目的は、社員に対して正当な評価を与えてモチベーションを管理することです。従って、透明性を高くすることと、成果に対して給与のアップやボーナス額への反映など、目に見える形での明確な評価が求められます。
そのためには、売上やミスの回数などの数値化できる指標は数値化して定量評価をし、
定量評価が難しい項目に関しては定期的にミーティングをしたり同僚からの多面的評価を参考にしたりして、社員が納得できるようにしましょう。
3-2.ワーク・ライフ・バランスの改善
ワーク・ライフ・バランスは、従業員のモチベーションに大きく影響します。・働き方改革が叫ばれており、いわゆる「ブラック企業」への風当たりが強くなっている
・働き方の多様化などにより、家事や育児と仕事を両立しようとしている会社員が増えている
・価値観の多様化により、オフの時間の過ごし方を重視する層が増えている
上記のような要望・欲求を満たすことで、社員のエンゲージメントを高められます。
3-3.社員の希望を反映した配置
社員のモチベーションを最大限に高めるためにも、チームの力を最大化するためにも社員の希望を反映した部署に配置することが重要です。社員の希望を汲み上げ、人材配置に活かすためには「社内公募制」「社内FA制」「キャリアカウンセリング制度」などを導入し、
キャリアアップを全面的に支援する対策が効果的です。
3-4.能力開発・キャリアパスの提示
長期的な展望をふまえて、能力開発やキャリアパスの提示をおこなうことも大切です。・将来のキャリアパスについて明確にする ・仕事を通じて得られるスキルやノウハウを共有する
・会社のビジョンや目標を明示する 上記のように、社員が将来に明るいイメージ
・展望をもてるように、情報を開示する姿勢が効果的です
リテンションをおこなう際のコツ・注意点とは?
リテンションマネジメントをおこなううえでの注意点を3点解説します。これらのポイントを押さえることで、チームとしての成果が高められ、リテンションマネジメントへの取り組みがさらに効果的なものになります。
4-1.継続的な目標管理の実施
リテンションマネジメントを実施する際には、継続的に目標を管理することも大切です。社員は仕事をしているうちにその都度、状況や目標が変化します。
会社に対して求めるものもその都度変わってくるため、継続的にミーティングを実施して具体的に確認をすることで「ズレ」を解消できます。
4-2.コミュニケーションの活性化
リテンションマネジメントのためには、上司と部下の間あるいは社員間でコミュニケーションが活発におこなわれていることも重要です。ミーティングの場では、社員がどうしてもかしこまってしまったり、ネガティブな感情を伝えづらかったりしがちです。
また、社内でのコミュニケーションが取れていないと、社員は居心地の悪さを感じる傾向があります。
4-3.全体最適を意識する
リテンションマネジメントをおこなう際には、全体最適を意識することが大切です。どんなに優秀な社員からの要望や要求であっても、他の社員とのバランスをあまりにも欠いた要求に応えようとすると全体のバランスが崩れます。
バランスを取るためにも、チームの力を最大化するためにも、会社全体にとっての最適な対策を意識して検討することが大切です。
まとめ
人事におけるリテンションとは、既存の社員の離職や退職を引き留める施策のことです。少子高齢化や採用の難化などを背景にリテンションの重要性は従来以上に高まっています。
リテンションのポイントは、以下のとおりです。
・正当な評価体制
・ワーク
・ライフ
・バランスの改善
・社員の希望に沿った配置転換
・長期的視野に立ったキャリアパスの提示
自社のコスト削減などチーム力向上のため、
長期的な視点と全体最適を意識しながら、ぜひリテンションマネジメントに取り組んでください。