少子高齢化による労働の担い手不足が声高に叫ばれる中、シニア世代の働き方の変化が注目されています。
内閣府が発表した「平成30年度版高齢社会白書」によると、
15歳以上の労働力人口は2000年の6766万人をピークに減少を続け、2017年は6720万人となっています。
それに対して、高齢者の労働力人口については、60〜64歳は2000年の426万人から2017年は536万人に、
65〜69歳が265万人から454万人に、そして70歳以上が229万人から367万人と増加の傾向にあります。
少子高齢化が進むことで労働力人口が低下し、生産性の低下につながります。
そして、低下した分を労働時間に費やすことで、育児に掛けられる時間が減り、
結果として少子化をさらに加速させる原因にもなりかねません。
そうした事態をふまえて、労働力人口の確保や企業を成長・発展させていくためにも、
シニア世代を活用できる体制を整えることは急務となってきています。
この記事では、特に企業担当者の方に向けて、
シニアの働き方の変化を踏まえつつ、活用のポイントについて解説します。
シニアの働き方・仕事への意識の現状
「シニア」や「シニア世代」は近年いたるところで利用されている用語ですが、厳密な言葉の定義はされていません。
しかしながら一般的には「65歳以上」がシニアにあたると考えられています。
少子高齢化による労働力人口の減少を背景に、「法律で定められているから、
シニアにも働いてもらう」のではなく、シニア社員に戦力として力を発揮してもらう時代へと変化しています。
そして近年、シニア世代の働き方・労働意欲においても変化し始めていることが注目されています。
1-1. 現状のシニアの就労状況
まずは、シニアと就労の現状を整理しておきましょう。
かつての日本は、終身雇用を土台とした年金制度に支えられており、
60歳=定年という制度・考え方が主流でしたが、近年では再雇用制度の拡張などもあり、
「定年後」も就労するシニアの方が増えています。
以下の表は、NRI総合システム社が60歳以上の男女2,000名を対象におこなったアンケート調査から
「男女・年齢別に見た仕事をしている割合」を引用したものです。
|
男性 |
女性 |
60~64歳 |
79.6% |
32.7% |
65~69歳 |
49.6% |
23.3% |
70~74歳 |
27.2% |
12.0% |
75~79歳 |
15.6% |
7.3% |
全体としては、60歳以上の約42%が「現在、仕事をしている」と回答しています。
シニアの仕事に関する考え方
単に就労の割合が変化しただけではなく、シニア世代の仕事に関する考え方や生活習慣にも変化が見られます。
50歳以上の人材に特化した人材派遣会社である、
株式会社シニアWebがおこなったアンケート調査によると、シニア世代の約8割がフルタイム勤務を希望しています。
また、転職時の仕事探しの際にインターネットサイトを使用する人が増えているなど、
これまでシニア世代はIT(情報技術)が苦手と思われていた認識が少しずつ変わってきていると言えます。
シニア世代の働き方変化の背景
国内の多くの企業で深刻な人材難が問題視されている中、
労働意欲の高いシニア人材の活用は問題解決の効果的な手法になる可能性があります。
では、一体シニア世代の働き方に関する意識はどのような背景から変化したのでしょうか?
要因として考えられるポイントを4点紹介します。
3-1. 背景①関連法案の成立
まず挙げられるのが、2020年にシニアの働き方に関する2つの法案が成立したことです。
- 70歳就業確保法
企業における定年の廃止や年齢引き上げ、継続雇用制度の導入など65歳~70歳の就業を国が支援する制度。
2021年4月より施行。
- 年金制度改正法
改正点の一つに「60歳~70歳まで」となっていた年金支給開始時期について、「60歳~75歳まで」に拡大されました。
75歳から受け取りをスタートすると毎月もらえる金額が増える仕組みとなっています。
2022年4月より施行。
3-2. 背景②寿命の長期化
医療の発達や栄養のある食生活などによる健康長寿化は一般的にもよく言われています。
この時よく用いられるデータは平均寿命ですが、過半数の人は平均寿命よりも長生きをします。
平均寿命とは、「その年に生まれた0歳の赤ちゃんが、
今の死亡率が変わらない状況なら何歳まで生きられるか」をあらわしたものです。
つまり、平均寿命は実際に死亡した人の年齢の統計を取ったものではありません。
一方、寿命中位数という別のデータもあります。
寿命中位数とは、ちょうど半数が生存してちょうど半数が死亡する年数を指します。
平成30年の平均寿命と寿命中位数を比較すると次のようになります。
|
平均寿命 |
寿命中位数 |
男性 |
81.25歳 |
84.23歳 |
女性 |
87.32歳 |
90.11歳 |
つまり、男女とも平均寿命よりも3年近く長生きする人が半数以上いるということになります。
長寿化は非常にありがたいことであると同時に、
この間の生活を継続していくためにこれまで以上に老後資金が必要になります。
参考:厚生労働省「寿命中位数等生命表上の生存状況」
3-3. 背景③少子高齢化による労働人口の減少
少子高齢化による年金制度への不安も高まっています。
厚生労働省を始め、行政機関でも年金制度を維持するために様々な案が考えられていますが、
元気なシニアの活用はその代表的な案です。
3-4. 背景④生きがいとしての就労
仕事をすることは、シニアの方々にとって生きがいの一つにもなりえます。
特に長く仕事を続けてきた方にとって、
定年を境に仕事の出勤がなくなり、人と会ったりコミュニケーションをとったりする機会が減るのは非常に寂しく感じられるものです。
人生の生きがいとしても就労が大きな役割を果たしています。
企業がシニア世代を活用するためにすべきこと
最後に、企業がシニア人材を活用するためにはどのような対策が取れるでしょうか?
企業にとっては、雇用確保という社会貢献だけではなく、
直面している人材不足の解消を同時にはかることができるという点でも、シニア人材の活用は非常に大きな意味を持ちます。
しかし、単にそのまま仕事を提供するのではなく、
できるだけ負担を軽減し生産性を高めることができるよう、環境や制度を見直す必要があります。
4-1. 社内の制度の整備
シニア人材の活用をするために、最初に必要なことは社内制度の整備です。
例えば、継続雇用制度や時短勤務・在宅勤務制度の導入や、定年の撤廃・引き上げなどです。
継続雇用制度とは、希望者に対して定年を過ぎた後も労働契約を結ぶことです。
この時、希望者に対してどのような条件で継続勤務を許可するのか、といった条件整備も併せて必要です。
4-2 シニア世代の負担に注意する
シニア世代の場合、意欲やスキルが十分にあっても体力面に衰えが見えたり、
健康状態に不安があったりすることが少なくありません。
この時、次のポイントに意識してシニアの心身の安全に配慮しなくてはなりません。
・就労を継続するかどうか、配属先などについてできるだけ本人の希望を優先すること
・肉体的な負担の少ない就労内容にすること
・マニュアルや作業内容を改善すること
(例:マニュアルの文字やイラストを大きくして、見やすくすること、筋力的な負担の少ない作業内容に改善すること)
・若手世代への技術の移行や引継ぎを積極的におこない、シニア人材に業務が集中しないように配慮すること
・スタッフ同士のコミュニケーションの円滑化を図ること(変わったことや困ったことがあれば、すぐに相談できる状況を整えておく)
4-3 高齢者に使いやすいツールの活用を!
シニアにとって負担の少ない在宅勤務やテレワークの制度を整えることも効果的です。
都市部での電車通勤はもちろんですが、郊外などでの自動車通勤もシニア世代にとっては負担に感じられるものです。
そして、この時同時に注意したいのが、導入の手軽さとシニア人材にとっての使いやすさ・コミュニケーション活性化です。
- 導入の手軽さ
シニア人材の健康面や肉体的な負担の面を考えると、
ITツールは臨機応変かつ手軽に導入できるものが望ましいでしょう。
導入や設定に手間がかかるシステムを導入したとしても、
様々な配慮から仕事の内容や職務の負担が大きく変更になるケースも考えられるためです。
手軽に導入できるツールの例としては、アプリをダウンロードするだけで利用できるITツールがあります。
- 使いやすさ
在宅での使いやすさを考えたとき、利用したいツールは直感的な操作が可能なITツールです。
仕事探しの際にスマートフォンを活用しているシニアの割合が増えているとのデータを紹介した通り、
シニアの方々にとってもスマホは非常に身近なツールとなっています。
とはいえ、複雑な操作が必要なツールを導入しても使いこなせない可能性が高いですが、
直感的なツールであれば抵抗なく受け入れられるシニアの方も少なくないでしょう。
- コミュニケーション活性化
報連相の徹底のためにも孤独感の解消のためにも、ITツールの活用によりコミュニケーションを活性化させることも重要です。
また、コミュニケーションの活性化は業務効率の向上や業務の引継ぎにとっても不可欠です。
具体的におすすめのITツールを一つ紹介します。
ビジネスチャット「JANDI」は、スタッフのスマホにアプリをインストールするだけで、
社内のコミュニケーションを活性化させることのできるコミュニケーションアプリです。
直感的な操作で使用できるチャット機能やビデオ通話機能、資料の共有機能などが搭載されています。
導入企業での実績は次の通りです。
・不要なミーティング・・・29%削減
・メールでのコミュニケーション・・・82%削減
・業務生産性・・・56%向上
シニア人材の活用だけでなく、あらゆる業務効率の向上につながるツールです。
JANDIは無料トライアルから始められ、トライアル期間も無料でサポートを受けれらます。
昨今のテレワーク需要でお問合せ急増中のビジネスチャットツールです。
まとめ
本人の経済的な事情だけではなく、企業の維持・発展の観点から見ても、
シニア人材が就労することの意義は決して小さくありません。
今後さらに進んでいく高齢化社会に向けて、
労働力人口の確保や経験・ノウハウを継承するために、シニア世代の活躍が求められる日もそう遠くないでしょう。
幸い、こうした背景をバックに、
シニア人材自身にもフルタイムでの就労希望など、働き方への意識の変化が生まれています。
企業がシニア人材を活用するためには、環境や制度の整備も必要です。
また、シニア人材にとっても使い勝手の良いITツールの活用など環境整備を整え、
意欲あるシニア人材をぜひ活用して下さい。